長寿と菜食主義者の関係は?

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「菜食=100歳」ではない?80歳以上を対象とした最新エビデンスから考える長寿の条件

「野菜中心の食事は体に良い」「菜食主義者は長生きする」
こうしたイメージは、これまで多くの研究やメディアで繰り返し語られてきました。

実際、若年~中年期においては、菜食や植物性食品中心の食事が心血管疾患や一部のがん、総死亡率の低下と関連することが報告されています。

では、80歳を超えた高齢者が100歳に到達するかどうかという、「例外的な長寿」においても、同じことが言えるのでしょうか。

この疑問に答える重要な研究が、2025年に The American Journal of Clinical Nutrition に掲載されました。

 

研究の背景:長寿研究の「空白」を埋める試み

これまでの栄養疫学研究の多くは

  • 中年期の死亡率
  • 心筋梗塞や脳卒中などの発症

を主要なアウトカムとしており、100歳到達のような「超長寿」を直接検討した研究は多くありませんでした。

本研究は

  • すでに80歳以上
  • その後20年近く追跡

という点で、長寿研究として非常に貴重なデータを用いています。

 

研究方法の概要:信頼性の高い大規模データ

対象集団
  • 中国縦断健康長寿調査(CLHLS)
  • 1998年時点で 80歳以上
  • 5,203人
追跡期間 1998年~2018年
食事分類 雑食者 菜食者

  • 魚介類を摂取する菜食
  • 卵、乳製品を摂取する菜食
  • 完全菜食(動物性食品なし)
評価項目 100歳に到達したかどうか

 

社会経済状況・生活習慣・健康状態などを調整したうえで、百歳到達との関連が解析されています。

 

主な結果:菜食者は100歳到達率が低かった

全体結果

100歳到達者 1,459人
100歳未満死亡者 3,744人

 

雑食者との比較

菜食者全体 100歳到達の可能性が 約19%低下
完全菜食者 100歳到達の可能性が 約29%低下

 

一方で「魚介類を含む菜食」「卵・乳製品を含む菜食」では、統計学的に有意な差は認められませんでした

 

注目すべきポイント①:体重(BMI)との強い相互作用

 

この研究で特に重要なのが、体格によって結果が大きく異なった点です。

BMI<18.5(低体重)

菜食者で100歳到達率が明確に低下

 

BMI≥18.5

菜食・雑食で差は認められず

 

これは「痩せている高齢者ほど、完全菜食の影響を受けやすい」ことを示唆しています。

 

なぜ高齢者では「完全菜食」が不利になる可能性があるのか

80歳を超える高齢期では、

  • 筋肉量の維持
  • 免疫力の保持
  • 転倒・感染症の予防

が、生命予後に直結します。

高齢期に不足しやすい栄養素

完全菜食では、以下が不足しやすくなります。

  • 良質なたんぱく質(特に必須アミノ酸)
  • ビタミンB12
  • 鉄・亜鉛
  • DHA・EPA などの脂肪酸

若い世代では補給や代替が可能でも、高齢者では「吸収力そのもの」が低下しているため、
同じ食事内容でも栄養不足に陥りやすくなります。

 

「菜食は健康に良い」という通説との違い

 

重要なのは、この研究が 菜食を否定しているわけではない という点です。

若年~中年期 植物性食品中心の食事は有益な可能性が高い
超高齢期(80歳以降) 量・質・吸収効率がより重要

 

つまり、年齢によって「最適な食事」は変わるという、ごく臨床的に妥当な結論と言えます。

 

魚・卵・乳製品を含む菜食が示した「中庸の結果」

興味深いことに

  • 魚介類を摂取する菜食
  • 卵乳菜食

では、100歳到達率の低下は認められませんでした。

これは、動物性食品を「少量でも含める」・「栄養の偏りを防ぐ」ことが、超長寿には重要である可能性を示しています。

 

臨床的示唆:高齢者の食事指導で重要なこと

この研究から、医療現場で得られる示唆は明確です。

  • 「菜食か雑食か」より
    低栄養・低体重を防ぐこと
  • 高齢者に一律の食事理念を当てはめない
  • 筋肉量・体重・食欲を定期的に評価する
  • 極端な食事制限は慎重に判断する

 

まとめ:長寿の鍵は「主義」ではなく「適応」

本研究が示しているのは、

  • 菜食は健康的な側面を持つ
  • しかし 超高齢期では必ずしも百歳到達に有利とは限らない
  • 特に痩せている高齢者では、
    動物性食品を含むバランスの良い食事が重要

という点です。

長寿のための食事は、「信念」や「流行」よりも、年齢と身体状況に合わせた現実的な選択が鍵になります。

 

当院からのメッセージ

高齢期の健康管理で最も大切なのは、「正しそうな食事」ではなく「今の体を支えられる食事」です。

体重減少や食欲低下がある場合は、食事内容の見直しが寿命に直結することもあります。

気になる点があれば、お気軽にご相談ください。

 

参考文献

  • Li Y, et al. Am J Clin Nutr. 2025;101136.
  • Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey

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