帯状疱疹ワクチンは認知症に効果があるのか?

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最新研究からわかってきた意外な関連性

帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹やその後に残る神経痛を防ぐ目的で接種されるワクチンです。
近年、このワクチンが認知症の発症や進行にも関係している可能性が、複数の研究で報告され注目を集めています。

2025年、国際的に評価の高い学術誌 Cell に掲載された研究では、生弱毒化帯状疱疹ワクチン(HZワクチン)が、軽度認知障害や認知症の発症・進行を抑える可能性が示されました。

この記事では、その研究内容をもとに、

  • 帯状疱疹ワクチンと認知症の関係
  • どのような研究で分かったのか
  • どこまで分かっていて、どこがまだ不明なのか

を分かりやすく解説します。

 

帯状疱疹と脳の関係

帯状疱疹は、水ぼうそうの原因ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が再活性化して起こる病気です。

このウイルスは神経に潜伏する特徴があり、近年では、

  • 慢性的な炎症
  • 神経へのダメージ
  • 免疫機能との相互作用

などを通じて、脳の健康にも影響を及ぼす可能性が指摘されてきました。

そのため、「帯状疱疹を予防することが、将来的な認知機能低下にも関係するのではないか」という仮説が生まれています。

 

これまでに報告されていた研究

過去の疫学研究では、帯状疱疹ワクチンを接種した人は、認知症と診断される割合が低い
ことが、ウェールズやオーストラリアなどで報告されていました。

ただし、これらは観察研究であり、

  • 健康意識の高い人がワクチンを受けているだけではないか
  • 社会経済的要因の影響ではないか

といった「交絡因子」の問題が残っていました。

 

今回の研究の特徴:「自然実験」という手法

今回 Cell に掲載された研究の最大の特徴は、「自然実験(Natural Experiment)」と呼ばれる方法を用いている点です。

研究の仕組み

ウェールズでは、帯状疱疹ワクチンの公的接種プログラム開始時に、以下の制度上の違いがありました。

開始直後に80歳の誕生日を迎えた人 1年間、ワクチン接種の対象
開始直前に80歳になった人 生涯にわたり接種対象外

この制度を利用することで、年齢以外の条件がほぼ同じ2つの集団を比較することが可能になりました。

これは、通常の観察研究よりも因果関係に近づける強力な方法とされています。

 

研究で分かったこと

 

この自然実験を用いた解析により、次の点が示されました。

軽度認知障害(MCI)の診断が減少

HZワクチンを接種できた集団では、軽度認知障害と診断される割合が低下していました。

認知症の発症・診断が遅れる可能性

認知症そのものについても、診断が遅れる、または発症が抑えられる可能性が示唆されました。

認知症患者における「認知症による死亡」が減少

すでに認知症を発症している人においても、認知症関連死が減少していたことが確認されました。

特定の認知症タイプに限定されない

探索的解析では、

  • アルツハイマー型
  • 血管性
  • その他の認知症

といった特定のタイプに依存しない効果が示唆されています。

 

なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症に影響するのか

 

現時点では、正確なメカニズムはまだ解明されていませんが、次のような可能性が考えられています。

  • 帯状疱疹ウイルス再活性化による慢性炎症の抑制
  • 免疫系の再調整(免疫老化への影響)
  • 神経炎症の抑制

つまり、ウイルス感染を防ぐことが、間接的に脳を守っている可能性があります。

 

この研究の限界と注意点

A man calling for attention

 

重要な点として、以下は理解しておく必要があります。

  • ワクチンは認知症を完全に防ぐと証明されたわけではない
  • 使用されたのは生弱毒化ワクチンであり、現在主流の不活化ワクチン(シングリックス)とは異なる
  • 他国・他集団でも同様の結果が得られるかは、今後の検証が必要

したがって「認知症予防目的でワクチンを接種する」段階ではないという点は明確にしておく必要があります。

 

それでも臨床的に重要な意味

今回の研究が示しているのは、

  • 感染症予防が、将来の脳の健康にも影響しうる
  • ワクチンの価値は「その病気を防ぐ」だけにとどまらない可能性
  • 高齢期の予防医療の重要性

といった、予防医学の新しい視点です。

 

当院からのメッセージ

帯状疱疹ワクチンは、

  • 帯状疱疹の発症予防
  • 帯状疱疹後神経痛の予防

という確立した有効性があります。

今回の研究は、「それに加えて、認知機能にも良い影響があるかもしれない」
という将来への期待を示すものです。

ワクチン接種を検討されている方は、年齢・持病・ワクチンの種類などを踏まえて、医師にご相談ください。

 

参考文献

  • Live-attenuated herpes zoster vaccination and dementia outcomes: a natural experiment. Cell. 2025.
  • 帯状疱疹ワクチンと認知症に関する疫学研究

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