新型コロナワクチンに“がん治療を助ける可能性”?

  • #がん治療
  • #一般内科
  • #ワクチン情報

SARS-CoV-2 mRNAワクチンが腫瘍を免疫チェックポイント阻害剤に感受性化するという最新研究

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチンは、感染症予防の目的で多くの人に接種されてきました。
ところが、2025年にNature誌に掲載された最新の研究では、mRNAワクチンが「がん免疫療法の効果を高める可能性がある」という、これまでにない興味深い知見が報告されています。

今回は、その内容を専門的すぎない形で分かりやすく解説し、「がん治療の新しい可能性」としてどこまで期待できるのか整理します。

 

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)とは?

近年、「免疫でがんを治す治療」として注目されているのが 免疫チェックポイント阻害剤(ICI) です。

代表的な薬剤

  • ニボルマブ(オプジーボ)
  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
    など

これらは、がんが“免疫のブレーキ”をかけて増殖している状態を解除し、免疫細胞が再びがんを攻撃できるようにする治療です。

しかし──

ICIは「免疫反応が元々弱い患者」には効きにくい

腫瘍が“免疫学的にコールド(免疫が反応しづらい状態)”である場合、ICI単独では効果が出ないケースも多く、これが現在の大きな課題とされてきました。

 

個別化mRNAがんワクチンとの比較

本来、腫瘍をICIに反応しやすくする方法として、個別化mRNAがんワクチンが研究されています。

しかし…

  • ひとりひとりの腫瘍から抗原を特定
  • ワクチンを専用に製造
    という流れは非常に複雑で、高額・時間がかかるという難点がありました。

そこで今回の研究では、 全く別の方向から“既存のmRNAワクチン”を利用できるか?
という発想で実験が進められました。

「SARS-CoV-2 mRNAワクチン」が腫瘍を“ICIに効きやすい状態”に変える

● 前臨床(動物)モデルの結果

SARS-CoV-2 mRNAワクチンを投与すると──

✔ I型インターフェロンが大きく増加

これは「免疫が強く活性化された時に出るシグナル」です。

✔ 自然免疫細胞が腫瘍を“免疫の標的”として認識しやすくなった

その結果、
腫瘍関連抗原を標的とするCD8+ T細胞が活性化
し、がん細胞への攻撃が可能になりました。

● 免疫学的にコールドな腫瘍では?

ワクチン単独では「PD-L1の発現増加」が見られ、ICIと併用することでより強い効果が期待できるという反応パターンを示しました。

 

ヒトでも同様の免疫反応が確認

健常ボランティアでも、

  • I型インターフェロンの上昇
  • 骨髄系・リンパ系免疫細胞の活性化
  • PD-L1発現の増加

など、前臨床モデルと非常に似た反応が見られました。

ICI治療中の患者で「ワクチン接種後の生存率が有意に改善」

 

複数の大規模後ろ向きコホート研究(実際の患者データ解析)では、

● ICI治療開始から100日以内にSARS-CoV-2 mRNAワクチンを接種した患者

  • 中央値生存期間の延長
  • 3年生存率の有意な改善

というポジティブな結果が示されました。

特に驚くべき点は──

✔ “免疫学的にコールド”な腫瘍でも生存率が改善

本来ICIの反応が悪い患者群でも、ワクチン接種によって治療効果が高まる可能性が示されたのです。

 

今回の研究が示すこと

✔ mRNAワクチンは「感染症ワクチン」だけではない

✔ がん治療を後押しする“免疫調節剤”として働く可能性

✔ 非腫瘍関連抗原を標的とするワクチンでも腫瘍を感受性化

✔ 個別化ワクチンよりも広く活用できる可能性

✔ 将来的な「ワクチン × ICI治療」の組み合わせ療法の道が開ける

がん治療の世界では、免疫の操作による新たなアプローチが次々と登場しています。今回の研究は、既存のmRNAワクチンを利用してがん免疫療法を強化できる可能性を示す非常に重要な発見と言えます。

 

注意すべき点

  • 動物モデルが中心で、ヒトでの因果関係はまだ限定的
  • 後ろ向き研究のため、交絡因子の除外が完全ではない
  • mRNAワクチンががん治療として承認されたわけではない
  • まだ臨床試験での検証が必要

つまり、現段階で「mRNAワクチンをがん治療として使う」ことはできませんが、将来的には治療戦略の一つになりうる可能性があります。

 

当院から患者さんへのメッセージ

今回の研究は非常に興味深いもので、 「普段のワクチンが思いがけない形でがん治療に役立つ可能性」 を示しています。

まだ研究段階ですが、
✔ ICI治療を受けている患者さん
✔ 効果が得られにくい「免疫学的にコールド」腫瘍の方
にとって、将来的な治療選択肢が広がるかもしれません。

がん治療について不安や疑問がある方は、いつでもご相談ください。

 

参考文献

  • SARS-CoV-2 mRNA vaccines sensitize tumours to immune checkpoint blockade. Nature. 2025. PMID: 41125896
  • Medical Online Review(解説記事)
  • 免疫チェックポイント阻害剤に関する基礎・臨床研究
  • mRNAワクチンの免疫学的作用に関する論文

 

#鶴橋 #大阪市 #内科 #呼吸器内科 #腫瘍内科 #免疫療法 #がん治療 #ワクチン
#免疫チェックポイント阻害剤 #SARSCoV2 #COVID19ワクチン #医療コラム
#東成区 #生野区 #天王寺区 #健康相談 #最新医学 #Nature #腫瘍免疫

経験を活かして日々の診療を行っていきます

診療のご案内

がん治療

がん治療

がん治療は、手術、放射線治療、抗がん剤治療を柱として行われますが入院施設のある病院での治療が一般的です。ただ、自宅から離れていたり、忙しそうにしておりゆっくり相談できないこともあるようです。

一般内科

一般内科

風邪、インフルエンザ、発熱、胃腸障害、頭痛、膀胱炎などの急性疾患をはじめ、生活習慣病としての高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)など内科一般の診療をいたします。

呼吸器内科

呼吸器内科

呼吸器疾患とは気管支や肺の疾患で、気管支喘息、肺気腫、肺炎、間質性肺炎、肺結核、肺がん、胸膜中皮腫など呼吸器に関する診療を行います。

診療予約
電話する